スタプレ通信 Vol.2 2021 Summer

大学入試に新教科「情報」どんな教科?

高校の授業が変わる!新教科「情報」は実社会で役立つ学び

30年に1度の教育改革 新たな波が訪れ

現在の中学3年生(2021.6月現在)から大学入試の共通テストに「情報」が加わります。再編を含め、これまでの6教科30科目が7教科21科目となります。つまり、「情報」が国・数・英・理・社・公民と並ぶこととなり、大学に合格するためにより必要不可欠な教科となります。

「情報」は、2022年度から始まる新学習指導要領にて定められた「情報Ⅰ」の範囲から出題されることになっており、その中には、プログラミングや、統計データの活用などが含まれています。これらの知識をもとに、問題の発見・解決に向けて情報技術を活用できるようになることが、教科「情報」設置の大きな目的です。

3月24日に大学入試センターは、「情報」のサンプル問題を公開しました。 https://www.dnc.ac.jp/kyotsu/shiken_jouhou/r7ikou.html

「情報」が設立されるに至った経緯

高校で「情報」が必修化されたのは、2003年度のことです。「情報」は、私たちの生活と切って切れない関係となったコンピュータを正しく扱うために設けられました。日本政府は、当時から大きな危機感を持っており、文系理系関係なく、この情報社会を生き抜くために学ぶ必要がある。情報の教育が疎かだと世界的な情報社会の流れから日本が取り残されてしまう。と考えていました。

当初、「情報」は3種類の選択必修という形で授業が行われました。情報活用の実践力を学ぶ「情報A」、情報の科学的な理解を学ぶ「情報B」、情報社会に参画する態度を学ぶ「情報C」。この中で、多くの学校は「情報A」を設置して、基本的なPC操作としてWordやExcelの使い方を勉強させるのにとどまり、「情報B」の範囲であるプログラミング学習などは積極的に行っていませんでした。

そして時が経ち現在、世界的にAIやITによる技術革新が経済成長につながるといわれる中、政府もDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切っています。そこで、プログラミングやAIを使いこなせる人材育成を学校教育でもやらなければならないと、国を挙げて検討してきた結果、今回の「情報」教科の設置となりました。

「情報」で一体何を勉強するの?

新教科「情報」は「情報Ⅰ」の範囲から出題されます。情報Ⅰでは、(1)情報社会の問題解決、(2)コミュニケーションと情報デザイン、(3)コンピュータとプログラミング、(4)情報通信ネットワークとデータの活用の4つの内容を学習することになっています。これまでと最も大きな変化は、なんといってもプログラミングにすべての高校生が触れることになる点です。

サンプル問題を見てみると、設問の1つでは、東日本大震災をめぐる通信確保に関する資料をもとに先生と生徒の会話を穴あきにして、情報技術の仕組みや情報社会と人との関わりについての理解を問う内容となっています。

この中には、2進数・10進数を駆使して、あてはまるビット数などを数字で答えさせる問題もあります。

また別の設問では、選挙権年齢の引き下げで高校生にとっても身近になった選挙を題材に、比例代表選挙の得票から政党ごとの当選者数を求める配列を示して適切な回答を選択させるなど、プログラミングの力を問う問題も示されました。

▼サンプル問題のプログラミング部分。
一見アルファベットや数字が並んでいて、難しいプログラミングに見えるが、前述の問題文に答えは隠れている。Scratchでも作成は可能だ。

Scratchで学ぶ「情報」

では、この「情報」という科目、子どもたちが今勉強しているScratchとどうつながっているのでしょうか。

サンプル問題を見る限り、どの言語を学んでいても不公平がないように、日本語を交えたオリジナルのプログラミング言語での出題が予想されます。ブロックではないので、Scratchとは異なるように見える方もいるかもしれません。しかし、詳しく読み解いていくと、実は同じことを意味しているのだと気が付くことができます。

専門家の中野由章氏も「大事なのは、プログラミングの経験。プログラミングをする中での失敗、それを改善していってうまく動かすという成功の体験を経て、プログラミングの勘どころを持つのがすごく大切。これがあれば、Scratchでも大丈夫」と話しています。

▼上記の選挙の問題をScratchでも組んでみました
https://scratch.mit.edu/projects/514808881/

コードプログラミングと異なり、Scratchは、はじめやすく、高度なこともでき、いろいろなものを作れます。Scratchは、感覚的に理解しやすく、手軽にキャラクターを動かせる分、子どもたちは意欲をもって学んでくれます。

最も重要なことは、プログラミング的思考と呼ばれる、アルゴリズムを理解すること、そして自分の「作りたい!」を実現する力を養うことです。そこから、さらに自分の作りたいものを完成させるために、より適した言語を選んでいくのが、プログラミング学習における理想的な展開だと考えています。

「情報」教科設立から変わる大学教育

さて、この「情報」が一体どのくらい、優先度の高い教科となるでしょうか。

私は、「情報」は実社会で実践的に役に立つという点で、公民よりも受験率が高い教科になるのではないかと予想しています。プログラミングはともかくとして、データをもとに分析して戦略を考えたり、どんなデザインにすれば一目でわかってもらえるのかを考えたりすることを、仕事で行っていない方の方が少ないのではないでしょうか。

大学側にもメリットは大きいと予想されます。理系学部では、あらかじめプログラミング知識を持ったところから授業を始められるため、より専門的知識領域の学びに時間を割くことができるようになります。文系学部でも、要素同士の相関関係を考える下地ができることで、より精度の高い論文ができあがることでしょう。

そして、これからのIT・AI領域が進化していく世界の中で、この領域に力を入れて大学の強みにしていこうと考える大学が増えてくることも予想されます。

その結果、「人気大学の多くが情報系の学部学科に力を入れだす」→「その学部学科の入試条件に『情報』を入れる」→「『情報』の受験教科としての重要性が増す」という流れも生まれそうです。

プログラミング講師から見る「情報」の先取り教育

子どものころからプログラミングを始める一番のメリットは、想像力が豊かなところにあると私は思っています。高校生で初めてプログラミングに触れるとなると、国数英と並び、まずは勉強としてプログラミングから入ってしまう子もでてくるでしょう。

プログラミングは本来、実現したいものを達成するための手段です。

子どものころから、自分の作りたいものを設計し、試行錯誤しながら作り出す経験を積んでおくことで、困難にぶつかっても乗り越えられる強い子に育ってくれると思っています。そして、一人でできないことが、仲間と手を組めば、実現できること。そのためには、自分の想いを口にしないといけないこと。このような様々な学びをプログラミングは提供してくれます。

その結果が、「情報」という教科で評価されることになったと、私は捉えています。楽しみながら、プログラミングを勉強しませんか?